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あなたの車/自轉車は何色ですか?

あなたの車/自轉車は何色ですか? エッセイ

風景に溶けたくない私の車選び

「白い車に乘る人は、多分賣却査定とか、他人の目線をすごく氣にしてゐるんだらうな――」

さういふ風に思つてしまふのは、私の偏見である。けれど、どうしてもその“無彩色の選択”が、私には“個性の表現より安定の選択”を選んだように見えてしまふ。

どの車も似たやうな顏をしてゐる。イベントなどに行つて駐車場に車を停めると、周りの車は、白、白、グレー、白。ときどき、黒。個性個性、個性の時代とか云ふのは何うなつたんだ。無難無難、無難のパレードだ。

以前、友人に「緑色の車なんて、なんか主張が強すぎて乗れない」と言はれたことがある。その時、私は「だよね」と、少し笑つた。ああ、自分はまたもやこの世界、すくなくとも日本では少數派なんだらうな、と理解させられるのである。

今、私が乘つてゐるのは、少し毒ッ氣のある、ライムグリーンの車である。駐車場ではすぐに見つかるし、街中ではたまに指を差される。でも、それでいいのだ。

むしろ、「この色を私が選んだ」という事實こそが、私が私であるための大切な證明なのである。

人からは「目立つね」と言われる。

しかし、實際に乗ってしまへば、中は少しだけ緑が差し色として配置されてゐるだけで、あとは至つて普通の車である。

結局のところ、外側の色なんて、乘つてる自分には見える筈ないのである、と云ふことが重要なのではないかと私は思ふ。何うみられるかなんて、結局外側に行かない限り観測できないものに囚はれてしまふと、私はなんだか一氣に萎れてしまふのだ。

だから私は、他人の目線からの色ではなく、自分の氣に入る色を選ぶ。

「私が選んだ」という事實だけが、今日もこの車を少し誇らしく走らせる。

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